二人の秘め事



この拍手お礼創作は
ナニかを連想させたり
それとなく示唆していたり
特殊部隊隊員を覗きに仕立て上げたり
と、非常にお好みが分かれる内容となっております。

一言で言うと、セクハラです。

それでもOKな方のみ、お願いします。




 何度となく通い慣れた通路の先に、見慣れぬ光景があるのを確認して柴崎は足音を潜めた。
 特殊部隊庁舎に入ってすぐ、会議室が並んでいる一角でドアに張り付いているのは──
「特殊部隊の精鋭が揃いも揃って何をなさっているんです?」
 手近にいた一人の後頭部に囁くと、つられて周りの数人も一斉に振り向いた。ぎょっとした顔が柴崎を認めた途端に、極まりの悪そうな物に変わる。
 その曖昧な雰囲気で光景を目にしてからの勘が益々強くなった。

 この先に、なにか、おもしろそうなものがある。

 持ち前の情報収集癖と好奇心が刺激され、自然と隊員達と同じ腰だめの格好になる。何人かがそっと場所を空けてくれた先にそのまま滑り込むと、目の先で指が振られた。
 背後を一瞬たりとも見ていなかったにも関わらず、ちょいちょいと手招きをしているのは進藤だ。
 ドアの真ん前、特等席へのご招待を受けると声を押し殺して笑っている進藤が、振っていた指を立てドアの向こうを指し示す。
 倣って寄せた耳に「……んっ」と中から誰かの気配がした。
 進藤を見ると、とうとう肩を震わせて笑いだしている。それでも物音一つあげないのが、さすが特殊部隊で第一級の狙撃手といったところか。
 笑うと言えば、小牧教官の姿が見えないわねー、あと手塚も。そういえば堂上班みんないないじゃない。
 どうしてなのか、疑問に思ったのと同時に返事がきた。脳内でも群がっている隊員達からでもなく、ドアの中、から。
「息を止めるな……馬鹿」
「だって……緊張、して……っ」
 はじめの声は堂上、続いたのは郁の声。
「さすがに、もう、慣れただろ」
「そんな……あ……無理」
「……平気だから、ほら」
「でもこんな……太いの、握ったこと……」
 切れ切れに聞こえるのは、ドア越しだからではないらしい。
 もともとの会話が、覚束ないのだ。
 まるで何かに熱中していて、気もそぞろになっているかの様に。
「いや……十分、上手い」
「あっ!」
「……っ!」
「ご、ごめんなさい、ひっかかっちゃった」
「いい、そのまま続けろ」
「はい……ここ、もっと上からのほうが、いいですか?」
「あぁ、そうだな、そこだ」
 郁と堂上は二人揃って同じ作業に夢中になっている様子で、これ以上聞くに堪えないと判断して呆れ交じりの息を吐く。
「そうとは知らず際どい会話してんのが面白いだろうが」
 隣でも聞こえるかぎりぎりの無声音で横を見ると、進藤はひょうひょうとした顔をしている。
 ぬけぬけと言うあたりは、さすが特殊部隊で第一級のお祭り男だ。
「これ、一歩間違えたらセクハラと言われてもおかしくないんですけど?」
 同じように出来ているかは分からないが、教育隊時代を思い出して声を殺して言い返す。
「いやいや、俺たちははじめてに不安そうだった後輩どもを、あたたかーく見守っていただけだぞ?」
 周囲で賛同の頷きが重なる。
 こういうすちゃらかなところが、本当に特殊部隊らしい。

「教官……っ、もう少し、強くしてもいい……ですか?」

 空気を読んだかのように、ネタを投下する郁も、本当に特殊部隊らしい。といえば、らしい。

「看板の仕上げをしてる二人は放っといて、小牧教官と手塚はどこ行ってるんです?」
「あいつらは会場設営だ」
 まさか、これを楽しむために追い払ったのかと問う。興が削がれた顔で進藤は声を出すと、他の隊員は音もないままに解散していった。
 当然だろう。本来なら今ごろ全員が会場設営にあたっていなければいけないのだから。
「セミナーは明日でしたよねー?」
 特殊部隊が当日の警備と、その前日の会場設営兼安全確認に駆り出されているイベントを、まさか進藤が忘れているとは思っていない。
 仮にも玄田が復帰するまでの間、副隊長を任せられている緒形と並ぶ特殊部隊の古参だ。
 だが、悪ノリという部分では玄田以上のものがあるのも事実で、おそらくこの状態を見つけた瞬間に傍にいた隊員を唆したのだろう。
 針ほどの隙間の先で、玄田愛用の大筆と墨に半泣きの郁がいる。
 堂上が声だけしか確認できないのは、自らも悪筆を自覚して後方支援にまわったからだろうか。
 ようは、二人とも真っ当に仕事をしている。

「しゃあない、俺もイス並べに行くか」
 明らかにつまらなさそうに去っていく進藤を見送り、細く開いていたドアを音が出ないことを祈りながらそっと閉める。

 そうとはしらず……って当たり前じゃない。
 まだまだそんな関係じゃないんだから。

 他人のリサーチ不足を知ると嬉しくなる自分と、二人の作業を歪曲して面白がっていた隊員達とどっちがマシかしら。

 少なくとも、今この瞬間だけは少しマシでありますように。そう思いながら柴崎は、セミナー会場と入り口に設置される看板作りに悪戦苦闘する二人を邪魔しないで戻ることにした。

あとがき

ごめんなさいごめんなさいごめんなさい楽しかったです
後悔はちぃともしてません

やっぱ内容がアレなので
OKだと読み始めたけどやっぱNGだったという方には申し訳ない