涙の訳
何か違和感を感じ目が覚めた。 頭を起こして部屋の中を見渡すが、いつもと同じで変わった様子はない。 腕の中で眠る相手も起きた気配はなく、穏やかな寝息を立てている。 再び眠りにつこうと頭を戻したとき、ようやく違和感の正体に気がついた。 すずの枕になっていた右腕が涙で濡れていた。 穏やかな寝顔と涙のギャップに驚いて体を起こすと、すずが喉の奥で不満げな声を漏らす。 しかしそれも一瞬のことで、またすぐに規則的な呼吸が聞こえてきた。 訳が分からずに見つめていると、月の薄い光に浮かび上がった口元がかすかに動く。 思わず口の動きを真似をして、何を言わんとしているのか気付いたとき、心を揺さぶられたような気がした。 “……お父さん……お母さん” 確かにそう言っていた。 普段は呆れるくらい前向きで無鉄砲で決して泣き言を言わないくせに、いつもこうして泣いていたのだろうか? わずか一年で経験した……両親の死、姉の失踪、など置かれた環境を考えれば、涙を流すことくらい自然な反応だとは思う。 しかし何もかも悟ったような穏やかな顔で、ただ静かに涙をこぼす寝顔を見ていると、自分の中に形容しがたい気持ちが浮かんでくる。 「本当に……馬鹿だな、お前は」 つぶやきながらそっと涙をぬぐってやる。 いつも俺を気遣い、自分からは寂しさや辛さを口にしない。 その姿勢を好ましく思ってはいる。 しかし……理不尽だとはわかっているが、まるで当てにされないのも腹が立つ。 大切にしたい、守ってやりたいと思うのはお前だけなんだぜ? もっと甘えて、頼って、お前には俺しかいないと思わせてくれ。 夢の続きが幸せなものであって欲しいと願いながら、濡れた目元にキスをする。 「……ん……」 かすかな声を漏らすが、眠りから覚めてはいないらしい。 ゆっくり頭をなでていると口元がまた動いた。 “……かずやくん” 寝顔は幸せそうな笑みを浮かべている。 その様子に満足すると、腕の中に抱き寄せ自分も目を閉じた。 |
あとがき 言い訳
短い、しかも御堂さんが妙にロマンティック
チックじゃなくてティックなくらい